10日の衆議院財務金融委員会で黒田総裁は、
民主党議員の質問に対して
「ここからさらに円安に振れることはありそうにない」と発言しました。
124円台半ばで推移していたドル/円は、
その発言からおよそ1時間で
122円台半ばまで急落し、市場参加者を震撼させました。
今後の経済イベントを考えれば、
128~130円の到達は想定内だったからです。
16日の参議院財政金融委員会では、
「円安を望んでいない、円安にならないと言ったわけではない」と述べ、
円安に対する牽制を否定しました。
5月半ばから始まったドル/円の上昇は、
日銀の量的・質的金融緩和が下支えしているとはいえ、
主に米利上げ観測が一段と強まったことが背景です。
しかも、6月5日に発表された米雇用時計は
市場の弱気を一掃するほどの改善を見せたことで、
ドル買い圧力は一段と上昇。
125円台後半まで足を伸ばしました。
イエレン議長の発言から騰勢を強め、1カ月足らずで約7円の急伸。
これは日銀にとってゆゆしき事態です。
ドル買いか円売りかは別にして、円安がさらに進行すれば、
食料品を中心とした輸入物価が大きく上昇してしまいます。
日本は、資源エネルギーや食糧品の大半を輸入に頼っています。
原油価格は3月の安値から50%程度も上昇しています。
こうした状況下で円安が急劇に進行してしまえば、
この先の景気に影を落とすことになります。
1-3月期のGDP二次速報値は年率3.9%とエコノミスト予想を
はるかに上回る好調さを示しましたが、
これに水を差しかねない状況になりつつありました
日銀にとって不都合なのは、
管理不能な円安に振れて景気が下振れしたときです。
量的緩和は基本的に金利を引き下げる目的で行ってはいるものの、
結果的には為替相場に大きな影響を及ぼします。
つまり、過度の円安による景気の下振れが起きたときに、
円安を助長する追加緩和は打ちにくくなります。
黒田総裁は、旧大蔵省・財務省で国際金融局長、財務官、
アジア開発銀行総裁を歴任した通貨マフィアです。
そのような人が“ベストなタイミング”で為替相場に影響を及ぼす
“うっかりな発言”をするはずがありません。
そのため、次に「黒田ライン」「黒田シーリング」といわれる
125円を上回ったときに、どのような手に出るのか。
期待を持って、動向を見守りたいですね。